RIMS使用に関するKFT利用者情報2007

トラブルを未然に回避した首都大学東京の例

首都大では2007年12月初旬にRIMSの”異変”に気付き,最悪の場合には加熱冷却ステージの破損につながる重大なトラブルが,未然に回避されました.
この事例はトラブルに至ったものではありませんが,未然に回避されたという点において,現在RIMSをご利用いただいている皆様にも大いに参考となる情報としてお伝えします.

具体的な事例

弊社では2007年11月下旬,首都大鈴木毅彦先生より,RIMS2000が何か不調のようだとの連絡を受けました.
学生が使っていて加熱冷却ステージが熱くなるらしいが,本当に不調かどうかよくわからないという状況でした.
長年RIMSを利用して来られた鈴木先生には異常が生じていることは明らかであったものの,初めての現象のため半信半疑だったようです.
その後2週間経過し,12月初旬に再度連絡があり,故障かどうかの判断も含め,詳しいチェックの要請があり,翌日には弊社山下がRIMSの作動を実際に検討し,状況と不調理由が判明しました.
以下に説明を加えますように,速やかに原因が判明したため,故障に至る前にトラブルが解消されました.

不調の状況

循環水の滞留による加熱冷却ステージの全体的過熱が生じる.
ただしポンプは正常に作動し,循環水ホースに折れ部分は認められない.

原因

循環水サーキット内における大きな気泡の発生で生じた水循環の停止によるサーモモジュール(ペルチェ素子)の異常発熱がRIMS不調の原因でした.
通常の測定時には,上下の設定温度範囲内でステージの温度がサーモモジュールでコントロールされますが,循環水はその際発生する高温あるいは低温廃熱を熱交換する重要な役割を果たします.
しかし管内流速が毎秒10cm程度と緩やかなため,一旦大きな気泡が管内あるいは加熱冷却ステージのジャケット(ステージの両脇にある金属製薄型箱)の中にできると循環水の流れが止まってしまうのです.
通常の測定では,このようなトラブルは生じません.
首都大ではある時期,コンピューターやコントローラーと循環ポンプの電源を別のコンセントからとり,その上循環水ポンプの電源が不安定で,時にOFFとなることがあったことがわかりました.
そのため,RIMS本体を稼働している状態で循環水ポンプが止まり,そのまま作動を続けたためジャケット内で過大な発熱が起き気泡が生じたと推定されます.
前述のように一旦大きな気泡が生じると循環水が完全に止まってしまうため,たとえ循環ポンプを再起動しても,水の循環が回復しなかったというのが原因と考えられます.

解消方法

循環水サーキット内に発生した大きな気泡を取り除くためには,循環ポンプを作動させた状態で過熱冷却ステージを顕微鏡からはずし,色々な方向にステージを傾け気泡を出せば正常に戻ります.
ただしステージには電源ケーブルやホースが接続されているため,不用意に取り扱うと別の破損を生じる恐れがあります.
したがって循環水が完全に止まり,ポンプを再起動しても水が流れない場合には,弊社にご連絡いただくのが一番です.

注意点

循環水停止のままでのRIMS本体を作動させることのないように,RIMSのすべての周辺機器を含め集中電源で一括して電源の維持・管理をすれば,上述のようなトラブルは未然に防止されます.
また平素から循環水が正常に流れることを常にチェックしておくことが大事です.
これらは決して難しい手続きを要しませんので,十分意識して実行していただくようお願いいたいます.

(2007. 12. 18)

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